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「なぜこんなにも、こども映画教室では子どもたちがキラキラと輝くのか」

金沢初のミニシアター「シネモンド」の代表を務め、全国で「こども映画教室」を展開する、土肥悦子さん。2015年日本映画ペンクラブ奨励賞を受賞し、2017年には東京国際映画祭でのワークショップ開催も決定するなど、ますます活躍の場を広げる土肥さんに、WSD受講当時のことを振り返ってもらいました。

ミニシアターブーム全盛期の1989年に映画配給興行制作会社ユーロスペースに入社し、買付、宣伝を担当する。アッバス・キアロスタミやレオス・カラックスなどの作品を担当。『そして映画はつづく』(晶文社刊)企画・翻訳。1998年にミニシアター「シネモンド」を金沢に開館。2003年「金沢コミュニティシネマ準備委員会(現金沢コミュニティシネマ)を立ち上げる。2004年から金沢で「こども映画教室」をプロデュース。2011~2013年、東京新聞「言いたい放談」にて隔週でコラムを執筆。2012年アミール・ナデリ監督『駆ける少年』配給宣伝を手がける。2012年青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラム修了。2013年、東京で任意団体「こども映画教室」を立ち上げ、その活動を横浜、川崎、福島、弘前、八戸、尾道、高崎、上田、豊田など全国に広げている。

編著:『そして映画はつづく』『こども映画教室のすすめ』『映画館(ミニシアター)のつくり方』

こども映画教室:http://www.kodomoeiga.com/

映画×WSD

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ミニシアター「シネモンド」から、ワークショップ「こども映画教室」へ

私がWSD育成プログラム(以下WSD)を受講したのは、2012年。そこに至るまでは、少し長い話になります。もともと映画の仕事をしていたのですが、結婚を機に東京から金沢に転居することになったのが1995年のこと。ところが、ユーロスペースのようなミニシアターが金沢にはなかったんです。であれば自分でつくってしまおうと、1998年に「シネモンド」というミニシアターを立ち上げました。ただ、ミニシアターの経営って本当に大変で。ヨーロッパによくある公設民営の映画館を目指し、地元に根差すための活動の一つとして、2004年にはじめたのが「こども映画教室」でした。

こどもと映画というキーワードが頭に浮かんだ時、以前観た『100人の子どもたちが列車を待っている』というチリの傑作ドキュメンタリー映画を思い出したんです。そしてこの映画に出てくる「こども映画教室」を日本でもやってみようと思いました。そのころはまだワークショップというキーワードは私のなかにはなくて、まったくの手探りではじめたんですが、これが本当に楽しくて! たとえば、映画制作ワークショップでは、小学生が3日間で映画をつくるのですが、子どもたちがキラキラと輝くのはもちろん、監督もスタッフも最後の上映会では「うちの子たちが…」って涙するんですね。

その魅力にとりつかれて活動を続けていく中で、ワークショップというキーワードに触れる機会も自然と増え、興味が高まっていたころに、映画人である知人からWSDを紹介されたんです。ワークショップが学べて、社会人向けで、しかも対面講座は土日。「だったら、なんとかなる。私でも行けるかも!」と受講を決めました。

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手探りでやってきたことの、意味を知ったWSD

はじめた当初から「こども映画教室」には2つのポリシーがありました。ひとつは「大人は手出し口出ししない」こと。映画に正解はないから、自分たちがやってみて、これだと思うことを見つければそれでいいと考えていました。もうひとつは「本物の映画人と出会う」こと。映画にぞっこんな大人に出会い、映画にぞっこんな大人がぞっこんになった映画と出会うことにこそ、大きな意味があると信じてきました。

WSDを受講して得たのはまず、こうしたポリシーのもとでやってきたことは間違ってなかったという自信。やってきたことには名前があって、理論的な説明もできるんだという発見もありました。例えば、「こども映画教室」では、なぜこんなにも子どもたちは目に見えて変わっていくのか、やっていながら分かっていなかったんです。あくまで子どもたちが主体で、大人は否定せず見守るスタンスを大事にしてきましたけど、まさにそれがワークショップの「ファシリテーション」と呼ばれるものだったんですよね。

自分は何が好きで、何に向いているのか

WSDの3か月は、とにかく「楽しかった」の一言に尽きます。大人になって、あれだけ濃密な時間を誰かと共有できるのはすごいことだと思います。肩書きをはずして、年上の人をあだなで呼んだり(笑)。実際に自分たちで段階を踏んで、ワークショップをつくっていきますけど、他者理解と合意形成を繰り返していくなかで、できあがっていく関係性が心地よくて。

その関係性のなかで改めて、自分は何が好きで、何に向いているのかを客観的に知ることができたのも大きいですね。ワークショップ実習の振り返りで、チームメイトがそれぞれをどう見ていたかを伝えるワークがあったんです。私がそこで言われたのは「強力エンジン」。「えっちゃんは、チームのエンジンだったよ。物事をゼロから動かし始める力を持っている人だよ」って言われて。そのときに初めて自分の特性に気づいたんです。周りからはこういう風に見えていて、しかも、そのままの自分でいいんだって思えた。それまで自身のファシリテーションにも自信がなかったんですが、ふっと楽になりました。

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多種多様な人との出会いとつながりがもたらすもの

なんといってもWSDの一番の売りは、多種多様な人との出会いとつながりではないでしょうか。私のチームには、下は大学生、上は定年間近の方もいて、職業的にも保育士、大企業の管理職、無職、演劇人もいましたけど、まったく違う年齢、立場の人とのつながりは、修了して5年が経った今でもかけがえのないものです。

映画関係者って、映画の世界しか知らない人が多いんですよ。でも世の中には「映画って必要ですか?」というような人もたくさんいる。これからの映画業界の発展を考えたとき、「なぜ映画が必要なのか」という、映画人には当たり前すぎて考えたこともないようなことを世の中に説明する必要もあるのだと、WSDはそんな気づきも与えてくれました。

WSDで学んだことをダイレクトに生かしながら、現在も全国で「こども映画教室」を展開していますが、2017年はさらに飛躍の年になりそうです。というのも、東京国際映画祭からオファーをいただき、「TIFFティーンズ映画教室2017」を初開催することが決定。夏休みに中学生24人と諏訪敦彦監督が9日間かけて映画を撮り、10月の東京国際映画祭でワールドプレミア上映をします。新たなチャレンジに今、とてもワクワクしています。

WSDにも、ワクワクと楽しい発見がたくさんあるはずです。ぜひ、一歩を踏み出して、飛び込んでみてほしいと思いますね。大学のキャンパスに足を踏み入れる、っていうことだけでも価値はあると思いますよ(笑)。

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